農地を相続したら|農業委員会への届出と相続登記(令和9年3月末期限)

農地を相続した場合に必要な、農業委員会への届出と法務局への相続登記の両方の手続きを、農林水産省の公式情報をもとに整理します。過去未登記の農地は令和9年3月末までの登記が必要です。

この記事の結論

農地相続には農業委員会への届出と法務局への相続登記の両方が必要です。過去に未登記の農地も対象で、令和9年3月末までに登記しないと過料の対象になり得ます。

更新日
2026-05-18
対象者
農地・田・畑を相続した相続人
手続き先
農地の所在地の農業委員会、農地を管轄する法務局
必要書類
農地法第3条の3に基づく届出書(農業委員会に提出)、登記事項証明書(相続登記用)、故人の戸籍謄本・除籍謄本一式、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書(協議成立の場合)または遺言書、相続人の住民票

編集方針

本記事は、法務省・国税庁・厚生労働省・日本年金機構・全国健康保険協会・各市区町村の公式情報を引用源として、死後ナビ編集部が中立的に整理しました。 記事内の数値・期限・必要書類は、ページ末尾の「参照した公式情報」に記載した一次情報をご確認のうえ、最終的な手続き判断は役所・法務局・税務署・弁護士・司法書士・税理士などの専門家に必ずご確認ください。

農地(田・畑)は宅地と異なり、農業生産の基盤として保護されているため、相続にも特別なルールが適用されます。農林水産省の農地相続ポータルでは「農地の相続については届出、登記がそれぞれ法律により義務付けられています」と明記されており、農業委員会への届出と法務局への相続登記の両方が必要です。

農地相続の2つの義務

手続き提出先期限根拠
農地相続の届出農地所在地の農業委員会相続を知った日から概ね10か月以内農地法第3条の3
相続登記農地を管轄する法務局相続を知った日から3年以内(過去未登記分は令和9年3月末まで)不動産登記法(2024年4月施行)

1. 農業委員会への相続届出

農地を相続したときは、その農地の所在地の農業委員会に届出をする必要があります。各農業委員会の窓口やHPに届出様式があり、農林水産省のサイトでも様式例(PDF)が公開されています。届出を怠ると過料の対象となる可能性があります。

  1. 農地の所在地の市町村役場で、農業委員会の窓口を確認する
  2. 農業委員会のHPまたは窓口で「農地法第3条の3に基づく届出書」を入手
  3. 農地の所在地番・面積・地目(田・畑・採草放牧地)を登記事項証明書から転記
  4. 相続人全員の氏名・住所・続柄を記入
  5. 添付書類(被相続人の死亡を証明する戸籍、相続人の戸籍、遺産分割協議書または遺言書)を準備
  6. 農業委員会に提出(窓口または郵送)

2. 法務局への相続登記

農地も他の不動産と同様、2024年4月から相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記しないと、正当な理由なき場合は10万円以下の過料の対象です。重要なのは、農林水産省の農地相続ポータルが「登記の義務化の前に相続した土地も対象です」と明示し、過去未登記の農地について「令和9年3月末までに登記する必要があります」と注意喚起している点です。

3. 相続した農地の活用方法

自分で農業を行う

相続した農地で自らが農業を行うことについて、特に手続きは必要ありません。ただし、水路などの共同利用施設について土地改良区などへの賦課金負担が必要な場合があるため、市町村・農業委員会・土地改良区にご相談ください。

農地を貸す・売る

農地を貸す・売る場合は、原則として農業委員会の許可が必要です(農地法第3条)。ご自身で借り手や買い手を探すのが難しい場合は、農地中間管理機構(農地バンク)に貸付けるという公式の仕組みもあります。

農地転用(宅地・駐車場等に変える)

ご自身所有の農地であっても自由に転用はできず、原則として都道府県知事等の許可が必要です(農地法第4条・第5条)。住宅を建てる、駐車場にする等の用途変更を検討する場合は、農地の所在する市町村の農業委員会にご相談ください。

4. 農地相続の税制

農地を相続した後、ご自身で農業を営む場合や農地バンクに貸し付ける場合には、相続税の納税の一部が猶予されます(相続税の納税猶予制度)。3大都市圏の特定市内か市街化区域かなどによって適用条件が変わるため、税務署または税理士にご相談ください。

また、土地全般について100万円以下の価格であれば登録免許税が免除される特例が、令和7年(2025年)3月末まで(その後の延長有無は法務局公式でご確認ください)措置されていました。詳細は法務局の登録免許税特例ページをご確認ください。

5. どうしても農地を手放したい場合: 相続土地国庫帰属制度

農地を含め相続した土地について、国に引き渡せる制度があります(相続土地国庫帰属制度)。買い手が見つからず固定資産税だけ払い続ける状態を解消できる新しい選択肢です。

申請ができない土地

  • 建物がある土地
  • 通常の管理・処分を阻害する耕作物がある土地
  • 土壌汚染や埋設物がある土地
  • 危険な崖がある土地
  • 権利関係に争いがある土地
  • 担保権等が設定されている土地
  • 通路など他人によって使用される土地
  • 農地の場合、農地バンクの中間管理権が設定されている土地、土地改良賦課金が課されている土地

費用(負担金等)

土地種別負担金備考
田・畑(市街地: 市街化区域・用途地域指定地域)20万円面積にかかわらず一律
田・畑(農用地区域等)500m²約72万円面積に応じて算定
田・畑(農用地区域等)1,000m²約110万円面積比例ではなく、面積が大きいほど1m²あたり低くなる
審査手数料14,000円/筆申請時に必要

農地相続の典型的なトラブル

  • 祖父母名義のまま代々登記されていない農地が判明し、戸籍を遡るのに時間がかかる
  • 相続人が農業をしない・遠方在住で、農地を維持できない
  • 農地バンクや農業委員会が借り手を見つけられず、固定資産税だけ払い続ける
  • 農地転用許可が下りず、宅地として売却できない
  • 相続土地国庫帰属制度の負担金が想定より高額(特に農用地区域)

司法書士・行政書士への相談タイミング

祖父母世代から未登記の農地、相続人が複数県に散らばっている、農地転用や売却を検討している、相続土地国庫帰属制度の利用を検討している、などのケースでは、令和9年3月末の期限を念頭に、司法書士または相続専門の行政書士に早期相談すると進行が早まります。

関連リンク

本記事で引用した農林水産省・法務省・政府広報オンラインの公式情報の最終確認日: 2026-05-18。

よくある質問

農地相続には特別な手続きが必要ですか
はい、農地(田・畑など)の相続には、通常の不動産相続に加えて農業委員会への届出(農地法第3条の3)が義務付けられています。法務局への相続登記も別途必要です。
農業委員会への届出はいつまでに必要ですか
農地法施行令により、相続を知った日から概ね10か月以内に農業委員会への届出が必要とされています。各農業委員会の窓口・HPに届出様式が用意されています。
相続登記の期限は通常と同じ3年以内ですか
はい、相続を知った日から3年以内です。さらに、過去に未登記のまま放置されていた農地も対象で、農林水産省の農地相続ポータルでは「令和9年(2027年)3月末までに登記する必要があります」と明示されています。
農地を相続しても自分は農業をしない場合は
農業委員会の許可を得て農地を貸す(賃貸)または売る(売却)ことができます。借り手を自分で探すのが難しい場合は、農地中間管理機構(農地バンク)に貸付ける選択肢もあります。詳細は農業委員会または農林水産省の農地バンク案内をご確認ください。
どうしても農地を手放したい場合は
相続土地国庫帰属制度を利用して国に引き渡す方法があります。田畑の場合、市街地(市街化区域・用途地域)は面積に関わらず20万円、農用地区域等の田畑は面積に応じて算定(500m²約72万円、1,000m²約110万円)です。加えて審査手数料14,000円/筆が必要です。
相続税の納税猶予制度はありますか
農地相続後に相続人自ら農業を営む場合や、農地バンクに貸し付ける場合は、相続税の納税の一部が猶予されます。3大都市圏の特定市内か市街化区域かなどによって適用条件が変わるため、詳細は税務署または税理士にご確認ください。

出典

このページの更新日: 2026-05-18